本文へ移動
https://www.cho-yo-yakkyoku.co.jp/files/libs/93/201708101631058343.png

薬剤師・杉本 忠嗣が考える薬と体、世界情勢のこと(ブログ)

米トランプ大統領(56):名門ハーバード大学への弾圧・敵視・攻撃にハーバード錯乱症候群スティーヴン・ピンカー(Steven Pinker)ハーバード大学心理学教授

2025-06-04
ハーバード錯乱症候群:スティーヴン・ピンカー(Steven Pinker)ハーバード大学心理学教授
日経(2025年6/4)池上彰
静岡(2025年6/4)伊藤元重
毎日(2025年6/1)
毎日(2025年6/1)長谷川眞理子エール大
日経(2025年6/2)FT
日経(2025年6/4)
毎日(2025年6/4)大治朋子+武田徹
静岡(2025年6/10)トランプ息子バロンは、NY大学生
バロン御曹司は、2024年9月~NYUスターン・スクール・オブ・ビジネスに入学。
トランプ、ハーバード大嫌いの理由
・リベラル嫌い
・反エリート
・反中国
・ユダヤ主義
7枚目のスライドに登場するハーバード大現役ピンカー教授の論文によれば
・リベラルに傾き過ぎ
・保守派3%のみ
ハーバード錯乱症候群
スティーヴン・ピンカー(Steven Pinker)ハーバード大学心理学教授

2023年12月には「ハーバードが自滅しないための5つの提案」を発表し、
・言論の自由、
・制度的中立、
・非暴力、
・視点の多様性、そして
・D.E.I.(多様性・公平性・包摂性)の権限縮小を訴えた。


----------------BSTBS(5/30)パックンの訴えは。。。------------------
標記、学長もユダヤ教徒。学生も10%程が教徒と。 全米で2%程なので、その5倍もの信仰がある。
それで、「反ユダヤ主義」というのは・・・言い掛かり以外なにものでもないと(涙)見せて💛テキサス
更に、共和党の州[レッドステート]では、そのような嫌がやせ(テキサス州立大?)など生じていないと。民主党の地盤の州の大学(UCLAなど)が狙われていると。

===2025.6.4===
●トランプはなぜハーバード大を激しく攻撃するのか?留学生追い出しという「暴挙」を招いた「二つのアメリカ」の衝突
小出 フィッシャー 美奈(経済ジャーナリスト)

2025年5月、名門ハーバード大学の留学生受け入れ資格が突如剥奪された。
卒業式わずか1週間前という異例のタイミング。
150カ国から集まった約7000人以上の学生・研究者を追い出そうという「暴挙」に対し、大学側も連邦地裁に提訴し、トランプ政権との全面対決に。
それにしてもなぜトランプはハーバード大学を狙い撃ちするのか?『マネーの代理人たち』の著者で、経済ジャーナリストの小出・フィッシャー・美奈氏が、「二つのアメリカ」の衝突の経緯を詳述する。

●寝耳に水、ハーバード大留学生7000人に降りかかった災難
5月から6月初めにかけての卒業式シーズン、大学の多い米国の街ではガウンとキャップ姿で、丸めたディプロマ(卒業証書)を手に両親や友人らと記念撮影をする若い人たちをよく見かける。
そんな中、とんでもないニュースが飛び込んで来た。5月22日、トランプ政権の米国土安全保障省(Department of Homeland Security, DHS)が、名門、ハーバード大学の留学生受け入れ資格を剥奪したのだ。

●ハーバード大卒業式の1週間前、というタイミングだった。
米国の大学が海外から留学生を受け入れるためには、DHSの下部組織である移民税関捜査局(ICE)から学生・交流訪問者プログラム(SEVP)に基づく認定を受けなければならないが、ハーバード大学は、この認定を取り消された。
認定が取り消されると、学生ビザ(F-1)のスポンサー資格を失う。

大学側が何もしなければ、9月に迫った新年度の入学生を受け入れられなるだけではなく、在学中の外国人学生や研究者も在籍できなくなる。
他校に移籍できない留学生は米国での滞在資格を失ない、帰国を迫られるという事態になった。

日本に置き換えて考えてみると、もし石破政権が早稲田大学を狙いうちして留学生受け入れ資格をいきなり停止し、外国人学生らが慶應や上智など他の大学に移籍するか、さもなければ帰国しなければならないという事態が発生したらどうだろう。
早稲田大学は3月3日現在、8,188人の外国人留学生を擁している(早稲田大学留学センターホームページ)から、大混乱となるだろう。

ハーバード大学国際課のウェッブサイトを見ると、同大には150ヵ国からの学生と研究者が合わせて1万人以上(うちF-1ビザ対象者が約6800人)、日本人の留学生や研究者も260人いる。
留学生の比率は27%。
4人に1人以上の学生が外国人で、同大が「留学生のいないハーバードなど、ハーバードではない」と主張する通り、グローバル化が進んでいる。

●当事者の留学生らにとっては寝耳に水。
受け入れ停止が実施されれば、今後の人生にも影響を与える出来事だ。

●「リベラル・エリート叩き」の標的にされた名門ハーバード
特定大学を名指ししたトランプ政権の決定も前代未聞だが、筆者が感心してしまったのが、ハーバード大学の対応の速さだった。
なんと認定取り消しの翌日に、政権側を相手取り、言論の自由を保障する合衆国憲法修正第一条に違反するなどとして、72ページの訴状とともにマサチューセッツ州連邦地裁に訴訟を起こしたのだ。

ハーバード大はそれと同時に、裁判所に認定取り消しの一時差し止めを申し立てた。
一時差し止めは、行政庁の処分によって「取り返しのつかない損害」が発生するおそれがある場合に、訴訟の結果を待たずに裁判所が命じることができる。
連邦地裁の判事が直ちに大学側の申し立てを認めて、執行の一時差し止めを命令じたので、留学生に影響が出ることはひとまず回避された。

同大の訴状には、ツイッター買収に絡んでイーロン・マスク氏が雇った法律事務所など、著名弁護士らの名が並ぶ。
日本で私立大学と国が裁判で大々的に闘うニュースなど殆ど耳にしないが、ハーバード大はトランプ政権と法廷で真向から対決する姿勢だ。

5月29日のハーバード大卒業式に参加した人から筆者が聞いた話では、挨拶に立ったアラン・ガーバー学長がヒーローのようにスタンディングオベーションで迎えられたという。
闘う大学の姿勢に学生らの支援は熱い。


●でも、なぜこんな事態になったのだろう。

一言でいうと、トランプ政権がアイビー・リーグと呼ばれる米国東部のエリート大学を「リベラルの巣窟」と見なして政敵にしている、とまとめることが出来ると思う。
だがまず、ここまでの経緯を簡単に振り返る必要があるだろう。

それは2023年10月7日、パレスチナ・ガザ地域を実効支配する武装組織ハマスがイスラエル南部で1200人を殺害し、250人を人質にするテロ事件を起こしたことに始まる。
これに対してイスラエル政府がハマス壊滅作戦を開始。
ガザ地区への軍事進攻により、一般市民を含む5万人以上の死者を出す惨事となっていることはよく報じられている。

米国ではイスラエルの行動に反発して、複数の大学で学生のデモが発生し、その一部は先鋭化。
ニューヨークのコロンビア大学ではキャンパスを占拠したデモ隊を、警官隊が乗り込んで排除するなど、緊迫した状況になった。

こうした中、キャンパスに拡大する反ユダヤ主義を黙認したとしてユダヤ系団体や個人などから大学側の対応に対する不満が強まり、事態は大口献金者による大学財団からの寄付金の引上げや米議会での公聴会、そしてコロンビア大、ペンシルバニア大、ハーバード大の学長辞任にも発展した。

ここで、キリスト教世界の歴史と距離のある日本から見て分かりにくいのが、イスラエルの軍事行動に対する学生デモがなぜ「反ユダヤ」と見なされて問題となったのか、というところだろう。

デモに参加している学生らは、「イスラエル政府」による非人道的な戦闘行為に純粋に怒りを覚えて反対しているのであって、「ユダヤ人」を差別しているわけではないだろう、言論の自由だ、と見るのが一般的だ。

ただ、ユダヤ系米国人の知己も多い筆者の観察では、物事はそう単純ではない。
「反イスラエル」と「反ユダヤ」の境界線はどうしても曖昧になる。
彼らから見れば、自分がイスラエル政府のやり方に賛同してもいないのに、ユダヤ人であるだけで悪意や嫌悪感を持って見られ、反イスラエルデモが大規模なユダヤ人バッシングにつながることへの恐怖がある。

その背景には、ユダヤ人口の3分の1が失われたホロコーストだけでなく、米国でも暴動の度にユダヤ系商店が焼き討ちにあったり、白人キリスト教徒の社交クラブやアイビー・リーグへの入学、ホテルやリゾートから排除されたり、有色人種と同じく差別用語で呼ばれてきた過去がある。
よくある「ユダヤ陰謀論」もその一環だ。

米国では欧州よりもキリスト教原理主義が強く、(参考記事:「トランプの影」いまだ色濃く…人工妊娠中絶論争で揺れるアメリカ中間選挙を読み解く「宗教的保守主義」)原理主義は異教徒を排他することで身内を固める傾向がある。2021年1月の米議会襲撃事件では、トランプ支持派の白人至上主義者らが反ユダヤのプラカードを掲げたり、シュプレヒコールを繰り返したことも記憶に新しいし、今回もワシントンDCのイスラエル大使館で二人の職員が殺害される銃撃事件が起きた。

こうしたことから、ユダヤ系米国人はヘイトに敏感だ。
トランプ大統領の娘婿の一族や、一部の保守派金融関係者がトランプ陣営に食い込んではいるものの、一般的には彼らは都会に住むリベラルで、民主党支持者やアンチ・トランプが多い。

にもかかわらず、現在トランプ政権が「反ユダヤ主義を助長した」という理由でアイビー・リーグの大学を攻撃しているのがさらに話をややこしくしているのだが、ユダヤ人保護や差別反対というよりも、学生デモや東部エリート大学に象徴される左派リベラルを叩くレトリックだと見た方が分かりやすいだろう。
それは、トランプ政権が同時に、多様性への取り組み(DEI)を中止するよう大学側に求めていることからも明らかだ。

●留学生追い出しに米国の未来はあるのか
最近の米国では、不法移民だけではなく、学生ビザによって合法的に滞在する留学生までが政治的なターゲットになる。

今年に入って、日本人を含む世界1000人以上の留学生ビザが一時取り消されたことが報じられたが、あらたにトランプ政権が世界各国の米大使館に対して、学生ビザ申請者の面接予約を一時停止するよう指示したことが明らかになった。
特に中国人留学生に対しては、共産党とのつながりや専攻分野によって「積極的に」ビザを取り消し、発行基準も見直すと国務長官が発表している。

最近は、米国各地の日本領事館でも、留学ビザが失効したという相談が急増しているらしいから、他人事ではない。
学生デモに参加していなくても、AIによるソーシャルメディアの検索などで身元を調査される。

1月には、コロンビア大学でのパレスチナ支援デモを先導していた元卒業生が令状なしに逮捕された。
この男性はシリア出身のパレスチナ人だが、永住権を持つ合法居住者だ。
にもかかわらず、国外退去処分の対象になり得ると判断された。
ニュージャージーの連邦地裁が、国外退去は違憲である公算が高いという判断を出したが、現在もルイジアナ州で拘束されたままで、その間に米国人の妻が男児を出産した。

トランプ政権は4月、留学生情報の提出を拒んだハーバード大学に対して、連邦政府助成金の一部を凍結。
この措置の取り消しを求めて同大が連邦地裁に提訴していた。今回の留学生受け入れ資格停止をめぐってハーバード側が新たな訴訟を起こしたことを受けて、トランプ政権は同大に対する30億ドル(約4300億円)の助成金を打ち切り、さらに全ての政府契約を打ち切ることも表明した。

トランプ政権とハーバード大学のバトルは、今の米国内の相入れない「二つのアメリカ」の衝突(参考記事:トランプ次期政権の「格差と分断」を加速する「破壊的人事」…マスクにケネディ家の異端児、元「WWE」トップまで)を象徴するようだ。

でも筆者が理解に苦しむのは、トップ大学の留学生排除や助成金打ち切りが、米国の国益に結び付くとは考えにくいことだ。

米国のアイビー・リーグの財力は圧倒的で、ハーバード大基金は2024年度で530億ドル、日本円で7.6兆円もの資金を抱える。
世界中の卒業生からの寄付もあり、政府から助成金を止められても授業などの運営になんら支障は出ない。
助成金の行き先は、医学や科学技術の最先端分野の研究プロジェクトで、これらは長期的に米国の国際競争力を高めるものだ。
資金を失う研究者らは、多分デモとは何の関係もないだろう。

長年米国に暮らしていて、この国の強さの源泉は、学術分野からビジネス、スポーツ、芸術分野に至るまで、世界中から才能のある人々を大量に惹きよせて交流させ、競争させることにあると、つくづく思う。
トランプ政権の留学生追い出しは、世界の才能を米国から他国に向かわせるだけだ。
それは、知の流出を早めて、米国の国力を弱めるだけではないだろうか。




ハーバード錯乱症候群 :スティーヴン・ピンカー(Steven Pinker) ハーバード大学心理学教授
ハーバード錯乱症候群
スティーヴン・ピンカー(Steven Pinker)
ハーバード大学心理学教授

この22年間、ハーバードの教授として、私は「恩を仇で返す」ことも厭わなかった。
2014年のエッセイ「ハーバードの問題点」では、現在の「トカゲの目玉にコウモリの羽」式の神秘主義的な入学制度を批判し、それに代わる透明で実力主義の入試制度を提唱した。
2023年12月には「ハーバードが自滅しないための5つの提案」を発表し、
・言論の自由、
・制度的中立、
・非暴力、
・視点の多様性、そして
・D.E.I.(多様性・公平性・包摂性)の権限縮小を訴えた。


2023年10月7日の周年には「ハーバードがイスラエルについて学生にどう語らせるべきか」と題して、道徳的・歴史的複雑さに向き合う教育の必要性を訴えた。
2年前にはハーバードにおける学問の自由を擁護する団体「Council on Academic Freedom」を共同設立し、以来、大学の方針を繰り返し批判し改革を求めてきた。

つまり、私は決して母校の擁護者ではない。
だが、現在ハーバードに向けられている非難の言葉は、もはや常軌を逸している。
批判者たちによれば、ハーバードは
「国家の恥」
「目覚め(woke)系マドラサ(洗脳スクール)」
「毛沢東主義の洗脳キャンプ」
「愚者たちの船」
「反ユダヤ的憎悪と嫌がらせの牙城」
「過激派の暴動の巣窟」
「イスラーム過激派の前哨基地」であり、
キャンパスに蔓延る「支配的な見解」は「ユダヤ人を滅ぼすことこそが西洋文明の根を断ち切る道」だという。


これらはドナルド・トランプ前大統領の意見に及ぶ前の話である。
彼はハーバードを「反ユダヤ的極左機関」「リベラルの混沌」「民主主義への脅威」と呼び、「目覚めた急進左派の愚か者やアホばかりを雇っており、学生や未来のリーダーに“失敗”しか教えていない」と述べている。
これは単なる罵詈雑言ではない。
トランプ政権は、研究予算を全面的に削減したうえで、ハーバードだけを標的にして連邦補助金をゼロにした。
さらに、外国人学生の受け入れ停止、基金への課税15倍、非課税法人としての地位の剥奪までをも企てている。

これを私は「ハーバード錯乱症候群(Harvard Derangement Syndrome)」と呼ぶ。
アメリカ最古・最富裕・最有名の大学であるハーバードは、常に過剰な注目を集めてきた。
大衆の想像の中では、ハーバードは高等教育の頂点であると同時に、エリートに対する不満の格好の標的でもある。
心理学には「分裂(splitting)」という概念がある。
これは、他者を完全な善か完全な悪のどちらかとしてしか認識できない、白黒思考の一種である。
弁証法的行動療法では、「ほとんどの人は長所と短所の混在である。すべてを悪と見るのは長期的に役立たない」と指導する。
この「分裂的思考」は、教育・文化機関に対してもまったく同じく有害である。
私自身、ハーバードには深刻な問題があることを最初に指摘した一人だ。
大学に何かしらの異常があるという感覚は広く共有されており、それがトランプ氏による激しい攻撃への共感や溜飲の下がる思いにつながっている。

だが、ハーバードは何世紀にもわたって築かれてきた複雑なシステムであり、常に予期せぬ挑戦に直面している。
不完全な機関に対して取るべき適切な対応は、どの部分にどのような治療が必要かを診断することであって、頸動脈を切って血を流させることではない。

ではなぜ、ハーバードはこれほど格好の標的となったのか? 理由の一部は、その性質上避けられないものである。
まず、ハーバードは巨大である。
13の学部(経営学部や歯学部を含む)にまたがり、25,000人の学生が2,400人の教員によって教育を受けている。
当然ながら、そこには奇人変人や問題児も含まれており、現代ではそうした人物の言動がすぐにバイラル化する。
人々は「利用可能性バイアス(availability bias)」──つまり記憶に残りやすい事例に基づいて、それが世の中に蔓延しているかのように錯覚する──に弱い。
左派のうるさい活動家が1人いれば、大学全体が「毛沢東主義の洗脳キャンプ」と見なされてしまう。
また、大学は言論の自由を擁護しており、それには「不快な言論」も含まれる。
企業なら過激な社員を解雇できるが、大学はそうはいかないし、そうすべきでもない。

さらにハーバードは修道院ではない。世界中の研究ネットワークの一部である。
大学院生や教員の多くは他大学で教育を受け、他の研究者と同じ学会に参加し、同じ論文を読む。ハーバードは自らを特別視しているが、実のところ、ここで起きていることのほとんどは他の研究大学でも起きている。
加えて、学生は白紙のキャンバスではない。
彼らは、想像以上に同世代から影響を受けており、高校やハーバード、さらにはSNS上の同調文化によって政治的傾向が形成されている。学生の政治的傾向は、教授の洗脳によるものというより、緑の髪や鼻ピアスと同じく仲間の影響によるものである。
もっとも、ハーバードに対する敵意には一理ある部分もある。
私や同僚たちは、学問の自由の侵食について長年懸念してきた。
たとえば、2021年、生物学者キャロル・フーヴェンは、インタビューで「生物学的に男性と女性が存在する」と説明しただけで非難され、追放されるに至った。
これが我々が学問の自由のための評議会を設立するきっかけとなったが、これが最初でも最後でもなかった。

疫学者タイラー・ヴァンダーウィールは、2015年の最高裁に提出された同性婚反対の意見書に名前を連ねたことで、「修復的正義」セッションへの参加を強いられた。
バイオエンジニアのキット・パーカーが実施した犯罪抑止プログラム評価の授業は、学生に「不快感」を与えたという理由で中止された。
法学者ロナルド・サリヴァンは、ハーヴィー・ワインスタインの弁護を担当したことを理由に、学生を「危険に晒した」とされ、学寮の学部長を解任された。
言論の自由擁護団体FIRE(Foundation for Individual Rights and Expression)はこうした事例を記録しており、過去2年間、ハーバードは約250の大学中、言論の自由で最下位にランクされた。

これは単に個人への不正ではない。
研究者が「正しいこと」を言ったがために職を失うかもしれない、あるいは保守的な意見を持っているだけで非難される──そんな状況では誠実な学問探究など不可能だ。
たとえばサリヴァンの件では、大学は成人教育機関としての責任を放棄し、学生の感情に迎合した。
第六修正条項(被告人の弁護を受ける権利)や「法の支配」と「私刑」の違いを教える機会だったのに、それを放棄してしまったのだ。

だが、「目覚めたマドラサ」だって? これはまさに「分裂思考」であり、行動療法が必要だ。
キャンセル事例をいくつか挙げただけで、巨大な大学全体を否定するのは、比例感覚を欠いている。
私自身、これまでに「性差の現実性」「知能の遺伝性」「暴力の進化的起源」など、物議を醸すテーマを講義で扱ってきた(異論は歓迎し、論拠を求めることを条件に)。
抗議は一度もなく、むしろ大学からは表彰され、学部長・学長との関係も良好である。

私の同僚たちもまた、データに忠実に、政治的に正しくない結果であっても報告している。いくつか例を挙げよう:
「人種」には生物学的現実がある
結婚は犯罪を減らす
ホットスポット警備(犯罪多発地点の重点警備)は効果的
人種差別は減少してきている
音声指導(フォニックス)は読み書き教育に不可欠
トリガー・ワーニング(心的外傷を呼び起こす可能性がある旨の注意喚起)は逆効果にもなり得る
奴隷貿易においてアフリカ人も積極的に関与していた
学歴達成には遺伝的要因もある
薬物への強硬政策には一定の効果があり、合法化には害もある
市場経済は人々をより公平かつ寛大にすることがある

このように、ヘッドラインとは裏腹に、ハーバードの日常は「恐れずにアイデアを発表する」ことの積み重ねで成り立っている。
しかしながら、政治的・思想的な多様性という面では、ハーバードには実際に偏りがある。
2023年に『ハーバード・クリムゾン』紙が実施した調査では、教養学部(FAS)の教員のうち45%が「リベラル」、32%が「非常にリベラル」と答えたのに対し、「穏健」は20%、「保守または非常に保守」はわずか3%であった(なお、「目覚めた極左のアホ」という選択肢はなかった)。FIREの推定では保守的教員は6%程度とされている。

大学は必ずしも「代表民主制」である必要はない。
しかし、政治的多様性が乏しすぎれば、その使命を歪めかねない。
2015年には、社会心理学分野において「リベラル一色の文化」が科学的誤謬につながった事例が報告されている──たとえば、偏見のテストを黒人やムスリムにしか向けなかった結果、「保守派の方が偏見が強い」という誤った結論が導かれた、というものだ。

私たちの学問の自由評議会のメンバーを対象にした調査でも、各専門分野において政治的均質性が研究の偏りを生んでいるという証言が多くあった:
気候政策では、化石燃料企業の「悪魔化」にばかり焦点が当たる
小児医学では、思春期の性別違和(gender dysphoria)の報告をすべて真に受ける
公衆衛生では、費用対効果分析よりも政府の最大介入を提唱する
歴史学では、植民地主義の害ばかりが強調され、共産主義やイスラーム主義の害には無関心
社会科学では、あらゆる集団格差を人種差別に帰して文化的要因を無視
女性学では、性差別やステレオタイプは研究されても、性淘汰、性科学、ホルモン研究は排除される(これはフーヴェンの専門分野でもある)

確かに、ハーバードはもっと政治的・知的多様性を高めるべきだろう。
しかし、だからといって「急進左派の拠点」などと断ずるのは、現実を歪めている。
『ハーバード・クリムゾン』の調査によれば、ハーバード全体で「非常にリベラル」よりも右寄りに位置づける教員は相当数にのぼり、保守派の著名人──法学者エイドリアン・ヴァーミュールや経済学者グレッグ・マンキューなど──も多数在籍している。学部生に最も人気のある講義の多くは、保守派やネオリベラルによって教えられる経済学入門や、政治色のない確率論・コンピュータ科学・生命科学の基礎講義である。

もちろん、〈クィア民族誌〉や〈視線の脱植民地化〉といったコースも存在するが、こうした講義は少人数の「ブティック講座」に過ぎない。
私の学生の一人は、マルクス主義・ポストモダニズム・クリティカル社会正義理論のキーワード(「異性愛規範性」「交差性」「構造的人種差別」「末期資本主義」「脱構築」など)を検出するAI「Woke-o-Meter」を開発したが、それによれば2025–26年度のコースカタログ(FAS)の約5,000講義のうち、こうした要素を含むものは3%未満、一般教養講義では6%程度にすぎないという(そのうち3分の1は明らかな左派傾向あり)。
より一般的なのは〈神経機能の細胞基盤〉〈初級ドイツ語(集中講義)〉〈ローマ帝国の崩壊〉といった科目である。

さらに言えば、仮にハーバードが「自由市場経済を憎むように学生を洗脳している」としても、その効果は極めて限定
TOPへ戻る