薬剤師・杉本 忠嗣が考える薬と体、世界情勢のこと(ブログ)
米トランプ大統領(55)ノーム国土安全保障長官:名門大学への弾圧・敵視・攻撃
2025-06-02
ハーバード大アラン・ガーバー学長は、ユダヤ教徒と!!
背景、陰謀論、反官僚、反エリート、対メディアなど類似点多々。
● 自然は、真空を嫌う。 アリストテレス。
----------------BSTBS(5/30)パックンの訴えは。。。------------------
標記、学長もユダヤ教徒。学生も10%程が教徒と。 全米で2%程なので、その5倍もの信仰がある。
それで、「反ユダヤ主義」というのは・・・言い掛かり以外なにものでもないと(涙)見せて💛テキサス
更に、共和党の州[レッドステート]では、そのような嫌がやせ(テキサス州立大?)など生じていないと。民主党の地盤の州の大学(UCLAなど)が狙われていると。
===2025.6.4===
●トランプはなぜハーバード大を激しく攻撃するのか?留学生追い出しという「暴挙」を招いた「二つのアメリカ」の衝突
小出 フィッシャー 美奈(経済ジャーナリスト)
小出 フィッシャー 美奈(経済ジャーナリスト)
2025年5月、名門ハーバード大学の留学生受け入れ資格が突如剥奪された。
卒業式わずか1週間前という異例のタイミング。
150カ国から集まった約7000人以上の学生・研究者を追い出そうという「暴挙」に対し、大学側も連邦地裁に提訴し、トランプ政権との全面対決に。
それにしてもなぜトランプはハーバード大学を狙い撃ちするのか?『マネーの代理人たち』の著者で、経済ジャーナリストの小出・フィッシャー・美奈氏が、「二つのアメリカ」の衝突の経緯を詳述する。
●寝耳に水、ハーバード大留学生7000人に降りかかった災難
5月から6月初めにかけての卒業式シーズン、大学の多い米国の街ではガウンとキャップ姿で、丸めたディプロマ(卒業証書)を手に両親や友人らと記念撮影をする若い人たちをよく見かける。
そんな中、とんでもないニュースが飛び込んで来た。5月22日、トランプ政権の米国土安全保障省(Department of Homeland Security, DHS)が、名門、ハーバード大学の留学生受け入れ資格を剥奪したのだ。
●ハーバード大卒業式の1週間前、というタイミングだった。
米国の大学が海外から留学生を受け入れるためには、DHSの下部組織である移民税関捜査局(ICE)から学生・交流訪問者プログラム(SEVP)に基づく認定を受けなければならないが、ハーバード大学は、この認定を取り消された。
認定が取り消されると、学生ビザ(F-1)のスポンサー資格を失う。
大学側が何もしなければ、9月に迫った新年度の入学生を受け入れられなるだけではなく、在学中の外国人学生や研究者も在籍できなくなる。
他校に移籍できない留学生は米国での滞在資格を失ない、帰国を迫られるという事態になった。
日本に置き換えて考えてみると、もし石破政権が早稲田大学を狙いうちして留学生受け入れ資格をいきなり停止し、外国人学生らが慶應や上智など他の大学に移籍するか、さもなければ帰国しなければならないという事態が発生したらどうだろう。
早稲田大学は3月3日現在、8,188人の外国人留学生を擁している(早稲田大学留学センターホームページ)から、大混乱となるだろう。
ハーバード大学国際課のウェッブサイトを見ると、同大には150ヵ国からの学生と研究者が合わせて1万人以上(うちF-1ビザ対象者が約6800人)、日本人の留学生や研究者も260人いる。
留学生の比率は27%。
4人に1人以上の学生が外国人で、同大が「留学生のいないハーバードなど、ハーバードではない」と主張する通り、グローバル化が進んでいる。
●当事者の留学生らにとっては寝耳に水。
受け入れ停止が実施されれば、今後の人生にも影響を与える出来事だ。
●「リベラル・エリート叩き」の標的にされた名門ハーバード
特定大学を名指ししたトランプ政権の決定も前代未聞だが、筆者が感心してしまったのが、ハーバード大学の対応の速さだった。
なんと認定取り消しの翌日に、政権側を相手取り、言論の自由を保障する合衆国憲法修正第一条に違反するなどとして、72ページの訴状とともにマサチューセッツ州連邦地裁に訴訟を起こしたのだ。
ハーバード大はそれと同時に、裁判所に認定取り消しの一時差し止めを申し立てた。
一時差し止めは、行政庁の処分によって「取り返しのつかない損害」が発生するおそれがある場合に、訴訟の結果を待たずに裁判所が命じることができる。
連邦地裁の判事が直ちに大学側の申し立てを認めて、執行の一時差し止めを命令じたので、留学生に影響が出ることはひとまず回避された。
同大の訴状には、ツイッター買収に絡んでイーロン・マスク氏が雇った法律事務所など、著名弁護士らの名が並ぶ。
日本で私立大学と国が裁判で大々的に闘うニュースなど殆ど耳にしないが、ハーバード大はトランプ政権と法廷で真向から対決する姿勢だ。
5月29日のハーバード大卒業式に参加した人から筆者が聞いた話では、挨拶に立ったアラン・ガーバー学長がヒーローのようにスタンディングオベーションで迎えられたという。
闘う大学の姿勢に学生らの支援は熱い。
●でも、なぜこんな事態になったのだろう。
一言でいうと、トランプ政権がアイビー・リーグと呼ばれる米国東部のエリート大学を「リベラルの巣窟」と見なして政敵にしている、とまとめることが出来ると思う。
だがまず、ここまでの経緯を簡単に振り返る必要があるだろう。
それは2023年10月7日、パレスチナ・ガザ地域を実効支配する武装組織ハマスがイスラエル南部で1200人を殺害し、250人を人質にするテロ事件を起こしたことに始まる。
これに対してイスラエル政府がハマス壊滅作戦を開始。
ガザ地区への軍事進攻により、一般市民を含む5万人以上の死者を出す惨事となっていることはよく報じられている。
米国ではイスラエルの行動に反発して、複数の大学で学生のデモが発生し、その一部は先鋭化。
ニューヨークのコロンビア大学ではキャンパスを占拠したデモ隊を、警官隊が乗り込んで排除するなど、緊迫した状況になった。
こうした中、キャンパスに拡大する反ユダヤ主義を黙認したとしてユダヤ系団体や個人などから大学側の対応に対する不満が強まり、事態は大口献金者による大学財団からの寄付金の引上げや米議会での公聴会、そしてコロンビア大、ペンシルバニア大、ハーバード大の学長辞任にも発展した。
ここで、キリスト教世界の歴史と距離のある日本から見て分かりにくいのが、イスラエルの軍事行動に対する学生デモがなぜ「反ユダヤ」と見なされて問題となったのか、というところだろう。
デモに参加している学生らは、「イスラエル政府」による非人道的な戦闘行為に純粋に怒りを覚えて反対しているのであって、「ユダヤ人」を差別しているわけではないだろう、言論の自由だ、と見るのが一般的だ。
ただ、ユダヤ系米国人の知己も多い筆者の観察では、物事はそう単純ではない。
「反イスラエル」と「反ユダヤ」の境界線はどうしても曖昧になる。
彼らから見れば、自分がイスラエル政府のやり方に賛同してもいないのに、ユダヤ人であるだけで悪意や嫌悪感を持って見られ、反イスラエルデモが大規模なユダヤ人バッシングにつながることへの恐怖がある。
その背景には、ユダヤ人口の3分の1が失われたホロコーストだけでなく、米国でも暴動の度にユダヤ系商店が焼き討ちにあったり、白人キリスト教徒の社交クラブやアイビー・リーグへの入学、ホテルやリゾートから排除されたり、有色人種と同じく差別用語で呼ばれてきた過去がある。
よくある「ユダヤ陰謀論」もその一環だ。
米国では欧州よりもキリスト教原理主義が強く、(参考記事:「トランプの影」いまだ色濃く…人工妊娠中絶論争で揺れるアメリカ中間選挙を読み解く「宗教的保守主義」)原理主義は異教徒を排他することで身内を固める傾向がある。2021年1月の米議会襲撃事件では、トランプ支持派の白人至上主義者らが反ユダヤのプラカードを掲げたり、シュプレヒコールを繰り返したことも記憶に新しいし、今回もワシントンDCのイスラエル大使館で二人の職員が殺害される銃撃事件が起きた。
こうしたことから、ユダヤ系米国人はヘイトに敏感だ。
トランプ大統領の娘婿の一族や、一部の保守派金融関係者がトランプ陣営に食い込んではいるものの、一般的には彼らは都会に住むリベラルで、民主党支持者やアンチ・トランプが多い。
にもかかわらず、現在トランプ政権が「反ユダヤ主義を助長した」という理由でアイビー・リーグの大学を攻撃しているのがさらに話をややこしくしているのだが、ユダヤ人保護や差別反対というよりも、学生デモや東部エリート大学に象徴される左派リベラルを叩くレトリックだと見た方が分かりやすいだろう。
それは、トランプ政権が同時に、多様性への取り組み(DEI)を中止するよう大学側に求めていることからも明らかだ。
●留学生追い出しに米国の未来はあるのか
最近の米国では、不法移民だけではなく、学生ビザによって合法的に滞在する留学生までが政治的なターゲットになる。
今年に入って、日本人を含む世界1000人以上の留学生ビザが一時取り消されたことが報じられたが、あらたにトランプ政権が世界各国の米大使館に対して、学生ビザ申請者の面接予約を一時停止するよう指示したことが明らかになった。
特に中国人留学生に対しては、共産党とのつながりや専攻分野によって「積極的に」ビザを取り消し、発行基準も見直すと国務長官が発表している。
最近は、米国各地の日本領事館でも、留学ビザが失効したという相談が急増しているらしいから、他人事ではない。
学生デモに参加していなくても、AIによるソーシャルメディアの検索などで身元を調査される。
1月には、コロンビア大学でのパレスチナ支援デモを先導していた元卒業生が令状なしに逮捕された。
この男性はシリア出身のパレスチナ人だが、永住権を持つ合法居住者だ。
にもかかわらず、国外退去処分の対象になり得ると判断された。
ニュージャージーの連邦地裁が、国外退去は違憲である公算が高いという判断を出したが、現在もルイジアナ州で拘束されたままで、その間に米国人の妻が男児を出産した。
トランプ政権は4月、留学生情報の提出を拒んだハーバード大学に対して、連邦政府助成金の一部を凍結。
この措置の取り消しを求めて同大が連邦地裁に提訴していた。今回の留学生受け入れ資格停止をめぐってハーバード側が新たな訴訟を起こしたことを受けて、トランプ政権は同大に対する30億ドル(約4300億円)の助成金を打ち切り、さらに全ての政府契約を打ち切ることも表明した。
トランプ政権とハーバード大学のバトルは、今の米国内の相入れない「二つのアメリカ」の衝突(参考記事:トランプ次期政権の「格差と分断」を加速する「破壊的人事」…マスクにケネディ家の異端児、元「WWE」トップまで)を象徴するようだ。
でも筆者が理解に苦しむのは、トップ大学の留学生排除や助成金打ち切りが、米国の国益に結び付くとは考えにくいことだ。
米国のアイビー・リーグの財力は圧倒的で、ハーバード大基金は2024年度で530億ドル、日本円で7.6兆円もの資金を抱える。
世界中の卒業生からの寄付もあり、政府から助成金を止められても授業などの運営になんら支障は出ない。
助成金の行き先は、医学や科学技術の最先端分野の研究プロジェクトで、これらは長期的に米国の国際競争力を高めるものだ。
資金を失う研究者らは、多分デモとは何の関係もないだろう。
長年米国に暮らしていて、この国の強さの源泉は、学術分野からビジネス、スポーツ、芸術分野に至るまで、世界中から才能のある人々を大量に惹きよせて交流させ、競争させることにあると、つくづく思う。
トランプ政権の留学生追い出しは、世界の才能を米国から他国に向かわせるだけだ。
それは、知の流出を早めて、米国の国力を弱めるだけではないだろうか。
卒業式わずか1週間前という異例のタイミング。
150カ国から集まった約7000人以上の学生・研究者を追い出そうという「暴挙」に対し、大学側も連邦地裁に提訴し、トランプ政権との全面対決に。
それにしてもなぜトランプはハーバード大学を狙い撃ちするのか?『マネーの代理人たち』の著者で、経済ジャーナリストの小出・フィッシャー・美奈氏が、「二つのアメリカ」の衝突の経緯を詳述する。
●寝耳に水、ハーバード大留学生7000人に降りかかった災難
5月から6月初めにかけての卒業式シーズン、大学の多い米国の街ではガウンとキャップ姿で、丸めたディプロマ(卒業証書)を手に両親や友人らと記念撮影をする若い人たちをよく見かける。
そんな中、とんでもないニュースが飛び込んで来た。5月22日、トランプ政権の米国土安全保障省(Department of Homeland Security, DHS)が、名門、ハーバード大学の留学生受け入れ資格を剥奪したのだ。
●ハーバード大卒業式の1週間前、というタイミングだった。
米国の大学が海外から留学生を受け入れるためには、DHSの下部組織である移民税関捜査局(ICE)から学生・交流訪問者プログラム(SEVP)に基づく認定を受けなければならないが、ハーバード大学は、この認定を取り消された。
認定が取り消されると、学生ビザ(F-1)のスポンサー資格を失う。
大学側が何もしなければ、9月に迫った新年度の入学生を受け入れられなるだけではなく、在学中の外国人学生や研究者も在籍できなくなる。
他校に移籍できない留学生は米国での滞在資格を失ない、帰国を迫られるという事態になった。
日本に置き換えて考えてみると、もし石破政権が早稲田大学を狙いうちして留学生受け入れ資格をいきなり停止し、外国人学生らが慶應や上智など他の大学に移籍するか、さもなければ帰国しなければならないという事態が発生したらどうだろう。
早稲田大学は3月3日現在、8,188人の外国人留学生を擁している(早稲田大学留学センターホームページ)から、大混乱となるだろう。
ハーバード大学国際課のウェッブサイトを見ると、同大には150ヵ国からの学生と研究者が合わせて1万人以上(うちF-1ビザ対象者が約6800人)、日本人の留学生や研究者も260人いる。
留学生の比率は27%。
4人に1人以上の学生が外国人で、同大が「留学生のいないハーバードなど、ハーバードではない」と主張する通り、グローバル化が進んでいる。
●当事者の留学生らにとっては寝耳に水。
受け入れ停止が実施されれば、今後の人生にも影響を与える出来事だ。
●「リベラル・エリート叩き」の標的にされた名門ハーバード
特定大学を名指ししたトランプ政権の決定も前代未聞だが、筆者が感心してしまったのが、ハーバード大学の対応の速さだった。
なんと認定取り消しの翌日に、政権側を相手取り、言論の自由を保障する合衆国憲法修正第一条に違反するなどとして、72ページの訴状とともにマサチューセッツ州連邦地裁に訴訟を起こしたのだ。
ハーバード大はそれと同時に、裁判所に認定取り消しの一時差し止めを申し立てた。
一時差し止めは、行政庁の処分によって「取り返しのつかない損害」が発生するおそれがある場合に、訴訟の結果を待たずに裁判所が命じることができる。
連邦地裁の判事が直ちに大学側の申し立てを認めて、執行の一時差し止めを命令じたので、留学生に影響が出ることはひとまず回避された。
同大の訴状には、ツイッター買収に絡んでイーロン・マスク氏が雇った法律事務所など、著名弁護士らの名が並ぶ。
日本で私立大学と国が裁判で大々的に闘うニュースなど殆ど耳にしないが、ハーバード大はトランプ政権と法廷で真向から対決する姿勢だ。
5月29日のハーバード大卒業式に参加した人から筆者が聞いた話では、挨拶に立ったアラン・ガーバー学長がヒーローのようにスタンディングオベーションで迎えられたという。
闘う大学の姿勢に学生らの支援は熱い。
●でも、なぜこんな事態になったのだろう。
一言でいうと、トランプ政権がアイビー・リーグと呼ばれる米国東部のエリート大学を「リベラルの巣窟」と見なして政敵にしている、とまとめることが出来ると思う。
だがまず、ここまでの経緯を簡単に振り返る必要があるだろう。
それは2023年10月7日、パレスチナ・ガザ地域を実効支配する武装組織ハマスがイスラエル南部で1200人を殺害し、250人を人質にするテロ事件を起こしたことに始まる。
これに対してイスラエル政府がハマス壊滅作戦を開始。
ガザ地区への軍事進攻により、一般市民を含む5万人以上の死者を出す惨事となっていることはよく報じられている。
米国ではイスラエルの行動に反発して、複数の大学で学生のデモが発生し、その一部は先鋭化。
ニューヨークのコロンビア大学ではキャンパスを占拠したデモ隊を、警官隊が乗り込んで排除するなど、緊迫した状況になった。
こうした中、キャンパスに拡大する反ユダヤ主義を黙認したとしてユダヤ系団体や個人などから大学側の対応に対する不満が強まり、事態は大口献金者による大学財団からの寄付金の引上げや米議会での公聴会、そしてコロンビア大、ペンシルバニア大、ハーバード大の学長辞任にも発展した。
ここで、キリスト教世界の歴史と距離のある日本から見て分かりにくいのが、イスラエルの軍事行動に対する学生デモがなぜ「反ユダヤ」と見なされて問題となったのか、というところだろう。
デモに参加している学生らは、「イスラエル政府」による非人道的な戦闘行為に純粋に怒りを覚えて反対しているのであって、「ユダヤ人」を差別しているわけではないだろう、言論の自由だ、と見るのが一般的だ。
ただ、ユダヤ系米国人の知己も多い筆者の観察では、物事はそう単純ではない。
「反イスラエル」と「反ユダヤ」の境界線はどうしても曖昧になる。
彼らから見れば、自分がイスラエル政府のやり方に賛同してもいないのに、ユダヤ人であるだけで悪意や嫌悪感を持って見られ、反イスラエルデモが大規模なユダヤ人バッシングにつながることへの恐怖がある。
その背景には、ユダヤ人口の3分の1が失われたホロコーストだけでなく、米国でも暴動の度にユダヤ系商店が焼き討ちにあったり、白人キリスト教徒の社交クラブやアイビー・リーグへの入学、ホテルやリゾートから排除されたり、有色人種と同じく差別用語で呼ばれてきた過去がある。
よくある「ユダヤ陰謀論」もその一環だ。
米国では欧州よりもキリスト教原理主義が強く、(参考記事:「トランプの影」いまだ色濃く…人工妊娠中絶論争で揺れるアメリカ中間選挙を読み解く「宗教的保守主義」)原理主義は異教徒を排他することで身内を固める傾向がある。2021年1月の米議会襲撃事件では、トランプ支持派の白人至上主義者らが反ユダヤのプラカードを掲げたり、シュプレヒコールを繰り返したことも記憶に新しいし、今回もワシントンDCのイスラエル大使館で二人の職員が殺害される銃撃事件が起きた。
こうしたことから、ユダヤ系米国人はヘイトに敏感だ。
トランプ大統領の娘婿の一族や、一部の保守派金融関係者がトランプ陣営に食い込んではいるものの、一般的には彼らは都会に住むリベラルで、民主党支持者やアンチ・トランプが多い。
にもかかわらず、現在トランプ政権が「反ユダヤ主義を助長した」という理由でアイビー・リーグの大学を攻撃しているのがさらに話をややこしくしているのだが、ユダヤ人保護や差別反対というよりも、学生デモや東部エリート大学に象徴される左派リベラルを叩くレトリックだと見た方が分かりやすいだろう。
それは、トランプ政権が同時に、多様性への取り組み(DEI)を中止するよう大学側に求めていることからも明らかだ。
●留学生追い出しに米国の未来はあるのか
最近の米国では、不法移民だけではなく、学生ビザによって合法的に滞在する留学生までが政治的なターゲットになる。
今年に入って、日本人を含む世界1000人以上の留学生ビザが一時取り消されたことが報じられたが、あらたにトランプ政権が世界各国の米大使館に対して、学生ビザ申請者の面接予約を一時停止するよう指示したことが明らかになった。
特に中国人留学生に対しては、共産党とのつながりや専攻分野によって「積極的に」ビザを取り消し、発行基準も見直すと国務長官が発表している。
最近は、米国各地の日本領事館でも、留学ビザが失効したという相談が急増しているらしいから、他人事ではない。
学生デモに参加していなくても、AIによるソーシャルメディアの検索などで身元を調査される。
1月には、コロンビア大学でのパレスチナ支援デモを先導していた元卒業生が令状なしに逮捕された。
この男性はシリア出身のパレスチナ人だが、永住権を持つ合法居住者だ。
にもかかわらず、国外退去処分の対象になり得ると判断された。
ニュージャージーの連邦地裁が、国外退去は違憲である公算が高いという判断を出したが、現在もルイジアナ州で拘束されたままで、その間に米国人の妻が男児を出産した。
トランプ政権は4月、留学生情報の提出を拒んだハーバード大学に対して、連邦政府助成金の一部を凍結。
この措置の取り消しを求めて同大が連邦地裁に提訴していた。今回の留学生受け入れ資格停止をめぐってハーバード側が新たな訴訟を起こしたことを受けて、トランプ政権は同大に対する30億ドル(約4300億円)の助成金を打ち切り、さらに全ての政府契約を打ち切ることも表明した。
トランプ政権とハーバード大学のバトルは、今の米国内の相入れない「二つのアメリカ」の衝突(参考記事:トランプ次期政権の「格差と分断」を加速する「破壊的人事」…マスクにケネディ家の異端児、元「WWE」トップまで)を象徴するようだ。
でも筆者が理解に苦しむのは、トップ大学の留学生排除や助成金打ち切りが、米国の国益に結び付くとは考えにくいことだ。
米国のアイビー・リーグの財力は圧倒的で、ハーバード大基金は2024年度で530億ドル、日本円で7.6兆円もの資金を抱える。
世界中の卒業生からの寄付もあり、政府から助成金を止められても授業などの運営になんら支障は出ない。
助成金の行き先は、医学や科学技術の最先端分野の研究プロジェクトで、これらは長期的に米国の国際競争力を高めるものだ。
資金を失う研究者らは、多分デモとは何の関係もないだろう。
長年米国に暮らしていて、この国の強さの源泉は、学術分野からビジネス、スポーツ、芸術分野に至るまで、世界中から才能のある人々を大量に惹きよせて交流させ、競争させることにあると、つくづく思う。
トランプ政権の留学生追い出しは、世界の才能を米国から他国に向かわせるだけだ。
それは、知の流出を早めて、米国の国力を弱めるだけではないだろうか。











